
アイバンさん。日本に来たのも偶然だったという。
「弟が日本に住んでいて、日本人と結婚したんだ。彼を訪ねて日本に来たとき、ここに住みたいと思ってね。」
そう言って、少し照れくさそうに笑った。
一度イギリスに戻り、また日本へ戻ってきて仕事を探したのだそうだ。
“偶然が人生を決める”という話を聞くたびに、ニキズキッチンの物語そのもののようだなと思う。

そんなわけで、時はさかのぼって西暦2018年
料理教室を始めたいというアイバンさんのおうちへ、いざ初訪問!

ご自宅に招かれて出された料理が、もうホテルのアフタヌーンティーみたいで圧倒された。

焼きたてのスコーンに、自家製のクローテッドクリーム、キッシュ、ローストビーフ。
香りが立ち上がった瞬間、「あ、これはプロの世界だな」って思った。


テーブルの上に流れる空気まで整っていて、静かで上品。「これが公邸シェフの世界か」と思わず背筋が伸びた。
アイバンさんは20年以上、大使館の公邸でシェフをしている。食材を見る目がもう違う。

冷蔵庫にある材料をざっと見ただけで、味も香りも盛りつけも、全部頭の中で出来上がってる感じ。
動きにムダがない。料理って、音楽に似てるんだなと初めて思った。

ところで現在。週末の土曜日になると、奥さんの直子さんとふたりで
ブリティシュ・カフェ『MAIN Scone Cafe(千葉県大網白里市みどりが丘2-41-7)』を開いている。
柔らかい光が差し込む店内は、まるでイギリスの田舎のティールーム。

紅茶の香りと焼き菓子の匂いが混ざり合って、奥さんが笑いながらケーキを運んでくる姿が、なんとも穏やかだった。
あの空気に包まれてると、時間が少しゆっくりになる。

ニキズキッチンの料理教室も、やっぱりお二人そのもの。プロの正確さと家庭的なあたたかさが同居してる。
生徒がちょっと手間取ると、アイバンさんがジョークを飛ばし、奥さんも加わって笑いが起きる。

そのやりとりが自然で、教室全体がやわらかい空気に包まれていく。初めて来た人でも、あっという間に馴染んでしまうのがこのクラスのすごさだと思う。
大網白里という町も、どこかこのご夫婦の穏やかさを映している。家の裏には林があり、潮風が混じる空気がやさしい。

最近は移住者も増えてきて、のどかさの中に少しずつ活気が生まれている。東京から少し離れただけで、こんなに時間の流れが違うんだと、来るたびに思う。
それにしても、あの出会いが全部の始まりだったなんて。
スーパーの通路での何気ない会話が、こんなふうに人をつなぎ、文化を生む。
ニキズキッチンって、そういう“偶然の連鎖”の上にできてるんだろうな。

さて、あれから7年。
あの“小さな英国”は、今どうなっているんでしょう。
ギィとドアを開けてみました。
「大網白里でアイバンさん その③」へ、つづく。
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