高校時代。なんともう18年前。 おこずかいは1ヶ月5000円だった。勉強はとうに落ちこぼれていたのに、それでも受験を控えていたのでアルバイトは禁止。さらに制服は恐ろしいほど野暮ったかった。浮いた話なんてあるわけもなく。
友達に男の子を紹介してあげるから一緒にプールに行こうよ!と誘われて行ってはみたもののスクール水着が赤色になっただけのものしかなく。その水着を見られたくなかったので到着するなりブクブクと水の中を潜水してしまい、驚愕のまなざしでみられたり。
そんな華やかさなんて何もないある日の放課後。mちゃんから「今日横浜山手のセントジョセフインターナショナルスクールのナイトパーティに一緒にいこうよ」というお誘いをもらった。もしかしたら素敵な出会いががあるかもしれないから、とにかくお洒落な格好をしてきてということだったので、一生懸命タータンチェックのブレザーに紺のスカートをはいてお洒落をした。それを当時はトラッドと呼んでいた。
既に日は暮れて辺りは夕闇。二人でとことこと石川町の裏の坂道を登り、山手通り沿いにあったセントジョセフのアーチ型の門をくぐる。 すると中学生らしき日本の子供達が寄ってきて、にぎやいながら、普段は教室と思われる部屋まで案内してくれる。
部屋は真っ黒いカーテンで覆われていて、天井にはミラーボール。ダンボールでつくったお立ち台まで用意されている。そこに大音量のディスコミュージック。曲はかわいらしくジャクソン5のabc等が選曲されていた。声も体もそして生きるスタイルの柔らかい子供達が次々と踊る。
しばらくして曲も光もトーンダウン。すると目の前にいくつかのカップルが出来あがりチークダンスを踊りだす。もちろん高校生が主体だけれど、中にはまだあどけない表情の中学生や小学生も紛れ込んでいた。小さいなりに耳にピアスをあけていて、カーブのきつい洋服を着て男の子と抱き合っている。
ついさっきまで一緒に冗談をいっていた中学生達の変わりようにびっくりしてみていると「私たち実は兄弟なのよ」とクスクスと笑う。そんなんだから出会いもなにもなかったけれど、地味な学校生活を送っていただけに彼女達彼らたちとの出会いは強烈なインパクトがあった。
それが春の出来事。
それから半年。mちゃんから今晩セントジョセフでクリスマスパーティがあるからと誘われる。早速当時お気に入りだったKちゃんという男の子をそのパーティに誘った。あのインパクトを見せて しまいには一緒にチークを踊らせる という頭のない計画をもくろんでいた為、Mちゃんとは別に自力で学校に向かうことにした。
けれど残念ながらあの簡単な道を迷ってしまい山手の住宅街をひたすら、さ迷い、結局到着することができなかった。だからまだ私の中ではあのパーティが終わらずずっと続いているような錯覚にとらわれている。例え18年経っても。
今も昔も横浜山手はロマンチック。迷いながら見た山手の外国人の家の窓辺に移る大きなクリスマスツリー。あの頃より山手の窓辺は近くなった。
今年もクリスマスがやってくる。
セントジョセフはなくなってしまったけれど、他のインターできっとパーティが開かれていることだろう。