ニキズキッチン英語料理教室 ブログ

外国人の自宅で習う世界の料理教室

ペシャラットさんとタイ食材店めぐりに行ってきました。

海外に行くと、必ずスーパーや市場に行きます。見たことない野菜や調味料に出会えるのが楽しくて。どんな味なのか、どんな料理に使うのか気になって、かたっぱしから試食したい衝動にかられます。でも、実際は使い方がわからず、眺めるだけで終わってしまうことがほとんど。

 

 タイは様々なハーブやスパイスをすり潰してペースト状にして料理の味付けに使うので、市場に行くといろんなペーストが売られていてるのですが、これまたどう使っていいやらわからず。残念です。

 

 そんなこともあって、いつかタイ料理に詳しい人と食材店に行きたいと思っていたところ、笹塚でクラスを開いているペシャラットさんが、「買い物に行くから一緒に行きましょう」と誘ってくれました。

 

 ペシャラットさんはお子さんが3人いて、そのうちの2人が双子で高校受験という状況なので、ニキズで料理を教え始めたものの、忙しくてまだほんの数回しか開講できていません。それゆえご存じない方も多いかと思いますが、タイ人らしくおおらかで優しくて面倒見のいい、料理が大好きな素敵なおかあさんです。

 

 ペシャラットさんの出身は、バンコクから南東に下った東部のチョンブリー県。白砂の美しいビーチがあるリゾート地のパタヤも、このチョンブリー県にあります。そう、海に面した地域なんですね。ですから、郷土料理にはシーフードを使ったものが多いのだとか。バンコクの料理と似ているけれど、バンコクでは豚肉を使うところをシーフードで作ったり、そのシーフードの味わいを生かすために調味料を工夫したりと、地域性を感じさせる違いがあります。

 

 それって、タイ料理ビギナーの方にとっては、沖縄そば八重山そばの違いのようなもので、「食べ比べてみればたしかにちょっと違うかも」という程度の差異でしょうが、わかる人には新鮮に感じられるはず。もちろん、違いがわからなくても、美味しいからいいんですけど。

 

 買い出しのお供は、上野駅で待ち合わせ。まずはアジア食材ショッピングの定番であるアメ横センタービルの地下へ。ここは自分でも以前からよく買い物に行っているのですが、周辺の飲食店の人が仕入れに来るので、常時買い物客が多くて、店員さんになかなか話しかけられません。ビビってるわけじゃなく、遠慮しちゃって。ごくたまに、お急ぎのレストラン・スタッフがイライラしながら待っているのも気にせず、延々と粘り強く質問を続ける奥様をお見掛けすることもありますが・・・。店側の迷惑を考えると、どうもくどくどと話しかけるのははばかられて。

 

 調味料は種類も多く、ラベルのタイ文字が読めないので意味不明で、違いがどうなのか、できれば詳しく聞いてみたいんです。唐辛子だっていろいろあるし、聞きたいことは山ほど。それが、ペシャラットさんが一緒なら何でも教えてもらえちゃう。最高に幸せです。

 

 アメ横のアジア食材の店では、どこも数か国の商品を扱っています。タイ食材だけでなく、中国、韓国、ベトナムインドネシア、インド、バングラディシュなどなど。なので、あれこれ揃って便利ではあるのですが、その分、品数が多すぎて見きれません。でも、わかる人が一緒なら、タイ料理に必要なものだけ見分けてくれるし、「こんなのもありますよ」と教えてくれるので助かります。

 

 ペシャラットさんが探し出してくれたのは「ドッグニュー」。地味な乾物で、目立たない場所に置かれていて、そもそも名前も知らなかったので、自分ひとりだったら絶対に目に入らなかったでしょう。「グッドニュー」はニュー(ニウと呼ばれることも)の花のおしべを乾燥させたものです。カノムジーン・ナムニャオというつけ麺料理などに使われます。こういう特殊な物が発見できたのも、ペシャラットさんがいたからこそ。

 

 店の人も、食材に詳しいペシャラットさんがまじめに説明してくれている様子を見て、ただのひやかしではないとわかったのでしょう。手が空いているときには逆に向こうから話しかけてくれて、商品を出して説明してくれたりもしました。おやつにもなるそのまま食べられるスウィートなドライタマリンドも、そのひとつ。通常料理で使うタマリンドのペーストは、猛烈に酸っぱくて、とてもそのままでは食べられませんが、これは種類が違うのか、甘酸っぱくて美味しいんです。

 

 ちなみに、いままでこの店に行っても存在に気づかなかったのですが、ペシャラットさんに教えてもらって、袋入りの冷凍のココナッツミルクがあることを初めて知りました。ココナッツの果肉を削ったココナッツシュレッドの冷凍もありました。ペシャラットさんも使ったことはないそうですが、缶詰や乾燥ものとの違いが気になりました。

 

 同じ場所にある肉店には、皮付きの豚肉だけでなく、肉からはがした豚皮だけも冷凍で売られてました。これも今まで知らなかったなー。さすがアメ横。タイでは豚皮を揚げてせんべいみたいにスナックとして食べるので、ペシャラットさんはときどき購入しているのだとか。

 

 アメ横センタービルの地下をひととおり見た後は、電車に乗って錦糸町へ。錦糸町は以前からタイ料理店が多い町です。そのため、タイの食材を扱う店もいくつかあるようですが、ペシャラットさんが案内してくれたのは、その中でももっとも品数が充実しているというタイ食材の専門店。話を聞くと、タイから食材を輸入している会社が母体だそうで、値段もちょっとお安いです。

 

 店長らしきタイ人のおばちゃんは日本語もできるのですが、やはりタイ人同士でタイ語で話した方が話しやすいようで、ペシャラットさんに商品について質問してもらうと、とっても丁寧に教えてくれました。おばちゃん、じつはめちゃめちゃ話し好きみたいで。

 

 この店は少量ですがタイの食器や調理器具も販売しています。ペーストを作る時に食材をすり潰す石製のクロックヒンもあります。食器は白地に青で柄が描かれているやつね。ついでの情報ですが、この食器の柄のモチーフはパイナップルです。そう思って見ると、パイナップルの凹凸のある表皮のようでしょ。

 

 冷蔵ケースには野菜やハーブがあります。見たことのないハーブも、ペシャラットさんがいると説明してもらえてありがたいです。それをどう使ったらいいのかという話も聞けるので、調味料や野菜や肉も買って帰れば、すぐに作ってみることもできます。

 

 ドリアンを剥いて冷凍したものもありました。密閉パックになっているので、これなら電車で持って帰ってもにおわないからいいですね。家に着くころには、丁度よく解凍されていることでしょう。ドリアンのにおい、僕は気にならないのですが、タイでは高架鉄道や地下鉄、ホテルにドリアンは持ち込み禁止です。

 

 この店は、細い脇道を入ったところにあって目立たないのですが、食堂も併設しています。レストランというより食堂です。こことは別にすぐ近くでレストランも経営しているのですが、そことはメニューがちがいます。値段も安い。こちらの方がタイ人が普段に食べる料理って感じです。腹ペコだったので、食べてみることにしました。揚げた豚軟骨の炒め物と、発酵させた生ソーセージのサラダと、イズミダイのレッドカレーがけを注文。イズミダイが売り切れで、代わりにナマズになったものの、どれもうまし。もちろん一緒にもち米もオーダーして、甘辛いレッドカレーソースをつけていただきました。

 

 タイの市場には、必ずフードコート的な食事処があるのですが、ここは料理も雰囲気もまさにそんな感じです。リアルなタイが味わえます。しかも、食材店の中にあるから、食べながら今見た食材の話を先生から聞いて、食後にゆっくり買い物ができるのがいいですね。

 

 「ここなら生徒さんと食材店ツアーもできるんじゃないですか」と言うと、ペシャラットさんもすっかりやる気になって、さっそく店長のおばちゃんに相談していました。おばちゃんの感触も良さそうだったので、ツアーはきっと近いうちに実現するでしょう。お楽しみに。

 

 近所にペシャラットさんの友だちのレストランがあるというので、そちらにも行ってみました。「ウィパダー」という店で、マッサマンカレーの名店としてNHKの番組でも紹介されたようです。すでに満腹でしたけど、せっかくだからと料理を頼むことに。パッキーマオと、生のエビのサラダと、カオ・クルッ・カピ。パッキーマオは直訳すると「酔っぱらい炒め」というとんでもない名前の焼きそば。幅広麺を使った激辛炒めで、あまりの辛さに酔いも吹き飛ぶということらしいです。一口で汗が吹き出しますが、これまたうまし。甘辛ダレを付けて食べる生エビのサラダに癒され、発酵させたエビの出汁をきかせた宮廷チャーハンのカオ・クルッ・カピで、口の中のヒリヒリをリセットしました。どれもアロイです。

 

 しかも、値段もお手頃。なんですが、じつはこの店は、タイ国政府の商務省の国際貿易振興局という部署がおすすめするタイ・セレクトに認定されています。そんなタイ国認定レストランは、錦糸町エリアでは2店だけだとか。それなのに、安くて雰囲気もアットホーム。ここは食材店併設ではないですが、自家製の各種ペーストや、バナナの葉で包んで蒸したスイーツなども売られていました。

 

 先生と一緒にタイ食材店をめぐって、ディープな店でごはんを食べるツアー。実現したらいいなと思います。タイ食材はパッケージの文字も読めないし、先生と一緒に行ってくれたら大助かりです。息子さんの受験が終わってからでもいいので、ぜひやってほしいですね。期待してます。

 

食材店は他のお客様の迷惑になるので店内での撮影禁止ですが、今回は取材許可を取って撮影させていただいています。